筋トレ薬剤師の薦め

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【考察/結論】パスタのゆで汁に塩は必要か?

前回の「パスタ茹でるお湯に塩を入れると実際にどうなるか」を実験の続きです。

 

今回の記事は、考察からなので、結果までを目を通してもらえると嬉しいです!

 

 

muscle-pharmacist.hatenablog.com

 

早速、考察に入っていきます。

 

考察

【味・食感】

味と食感に関しては、対照群、2%で違いが明確にみられた。

 

小麦の味;塩なし群>1%群>2%群

塩 味   ;塩なし群<1%群<2%群

(柔らかい)塩なし群ー1%群ー2%群(硬い)

 

1%は、味・食感ともに、ちょうどバランスが取れていると感じた。3群の中では1%が料理に適している印象だった。

 

食感に関しては茹で時間の調整により変化をつけられるため、塩無しでは早めに茹で上げることで小麦の風味を活かせる可能性がある。

 

一方、少し硬めだった2%は長く茹でることで食感については調整が可能だと考えられる。

しかし、2%の塩分があるため、さらに塩味が強くなってしまうことも考慮すべきである。

 

シェフの中では、2%で茹でた後に、お湯で濯ぐ方法をとっている方もいる。

また、今回は3群間での比較だったが、シェフによっては1.5%、1.7%とさらに細かく塩分調整をしている場合がある。

 

この点については、さらなる実験や日々の料理を通して最適解を見つけていく必要がある。

 

【重量】

次に、重さについてです。

結果は、全ての群で120%以上増加した。また、加える塩が増えるとパスタの重量が低下する。

塩なし群と比較して、1%群では総重量が2%減少し、2%群では8%減少した。

また、芯の状態の写真だが、塩の濃度が上がると見た目では全体が吸水しているように見える。

しかしながら、実際に食した時は、塩分濃度が上がるとパスタの食感は硬い印象であった。

芯の見た目と食感に矛盾がある。

 

今回の重量減少、芯の状態の見た目と食感(硬さ)の矛盾について考えてみる。

まず、よく言われる「沸点上昇」についてだが、1Lの水に20gの塩を加えると約0.33℃沸点が上がる。

なので水の沸点は100.33℃となる。(詳細は別記事で紹介予定)

 

過去の報告を目にすると、温度と吸水速度は関係がありそうだった。

また、60〜70℃以上で温度増加と吸水速度は相関が見られていた。

実験では、5℃〜10℃の幅で行われており、0.33℃の細かな幅では実施していなかった。

 

今回の塩分濃度での沸点上昇は無視しても問題がないように思える。

 

次に、パスタの糊化(こか)の影響である。

糊化は、デンプンの分子間結合が切断され、粘度の上昇、保水性の増加などが起きる。

水に片栗粉を入れて温めると粘りが出るアレである。

 

パスタは、グルテンの網目構造の中にデンプンを持っている。

水分がグルテンの網目中のデンプンを糊化する。

 

簡単な流れは、

グルテンの網目が弛緩する→隙間のデンプンに水が届く→糊化する。

 

上記の流れが、外側から内側に徐々に進行していく。

水分子が内側に急激に進めないのは、デンプンに捕捉されるからだ。

 

過去の報告を参考にすると、塩(NaCl)5%未満の添加の有無で与える影響は、

①吸水速度が低下する。

②パスタ内にNaClが入り込む。

③Naは水和状態になる。(Naと水分子が一緒の状態)

 

このことを加味すると、パスタの内部にNaClが流れ込み、

そのNaと水和した水分子の一部はでんぷんに捕捉されないまま、中心部分に移動できる。

また、吸水速度が低下するため、全体は湿っているが、

塩無しよりも水分量が少なく、糊化が進まないためコシが出たと考えられる。

 

水の挙動と糊化のイメージはイラストのようだと予想している。

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水の挙動と糊化のイメージ

 

塩なし では、水が糊化に使われるため、ゆっくりと内側に進んでいく。

なので、中心部には十分に水は行かないため、芯があるように見えた。

 

一方、塩あり では、Naと水和するため、糊化に関与しない水が内側まで移動することができる。

そのため、全体に水が行き届くため芯は見えない、さらに吸水速度が下がるため、

塩あしパスタよりも水分含有量が下がり、全体的に硬く、塩なしよりコシがあるように感じたのだろう。

 

この仮定通りなら、対照群と2%群の間で起きた、食感と見た目の矛盾点が説明できる。

 

結論

「塩をゆで汁に入れることにより、パスタに塩が入り込み下味が入る。また、水分をNaが保持するため、吸水速度と糊化を抑制し、パスタにコシが出た。」と考えられる。

 

以上が、パスタの茹で汁に塩は必要か でした。

 

前回の記事にも記載したが、

通常の調理には、塩1%の茹で湯が扱いやすく、硬さもちょうどよいと感じました。

 

そして、ぜひ塩なしの茹で汁と塩1%濃度の茹で汁での食べ比べをしてもらいたいです。

今まで感じられなかった、小麦の風味を体感できます!!

 

それでは、次の実験をしたら報告させてもらいます!

また、料理での疑問点・検証してほしいことがあれば教えてください!