【番外編】お湯に入れる塩で沸点上昇を計算してみた
本日は、「沸点上昇」に関して紹介します。
以前に「パスタの茹で湯に塩は必要か?」をテーマに家で
簡易的な実験をしてみました。
muscle-pharmacist.hatenablog.com
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そこで、「お湯の沸点が上がるから、塩を入れる!」という
意見を聞いたことがあるため、今回は、イラストや計算式を用いて
解説していこうと思います。
さて、茹で湯に塩を入れるとどのくらい上がるのでしょうか?
実験にも使用した1Lの水に10gの塩を加えた(便宜上)塩分濃度1%の水を
例に考えてみると、計算上では、たったの「0.33℃」しか上がりません。
ぜひ、計算からも求められるようにもしましょう!
ということで、テーマを2つ用意しました。
①どのような考え・計算で沸点が上昇し、導けるのか。
②1℃沸点を上昇させるには塩はどのくらい必要なのか。
こちらを考えてみましょう。
①「どのような考え・計算で沸点が上昇し、導けるのか。」
沸点とは、液体が気体に変わる温度です。
通常、水の沸点は100℃です。
でも、個の沸点は不変ではないんです。
山の上だとお湯がすぐ沸くって聞いたことありませんか?
それは、気圧が低いからです。
例えば、富士山の頂上では87℃程度で沸騰します。
気圧が下がると、沸点が下がり、100℃以下で沸騰します。
逆に、気圧が上がると、沸点が上がります。
キッチンでは、気圧をあげることは難しいため、
気圧ではなく、お湯にかかる圧力をあげれば沸点は上がる。
圧力=抑える力。
言い換えると、表面から水が出ないように邪魔をする力です。
前述の富士山のたとえをイラストにすると、気圧(赤い棒)が小さくなるため、
邪魔する力が小さくなるため、沸騰する温度が下がります。
今回はその邪魔する役目を「塩」がします。
塩の粒が水面にあると、そこから水が出ていけないので、邪魔をすることになります。
なので、塩を入れると沸点が上がります。
では、1%濃度の塩水では沸点がいくつか計算してみましょう。
と、その前に計算前に条件を整理します。
今回使用するのは、
水の沸点上昇度;0.52K×kg/mol
水:1L(=1kg)
塩(NaCl):10g
分子量 Na:23、Cl:35.5
余談ですが、計算をする際に大事なのは単位を合わせることと意味を理解することです。
そうすると間違いが少なくなります。
沸点上昇度の単位ですが、K(ケルビン)は℃と同じです。
なので、単位の意味は、「1kgに1molの物質を入れると0.52℃沸点が上がる」ということです。
molとは、粒の数だと思ってください。
塩(NaCl)は、水に入るとイラストのようにNa+とCl-に分かれるため、
塩1粒が水に入ると2粒に増えます。
では、計算していきます。
NaClの水中でのmolを求めます。
10g/58.5=0.17
0.17×2=0.34(mol)
次に沸点が上昇する度合いを求めます。
0.52×0.34/1=0.177(℃)
1%の塩分濃度で、100℃が100.177℃に沸点が変化しました。
②1℃沸点をあげるために必要な塩の量を求めます。
0.52(K×kg/mol)=1(℃)×1(kg)/X(mol)
X=1/0.52=1.92
これは水中での粒の数なので、NaClのまとまりにするために2で割ります。
1.92÷2=0.96(mol)
塩の分子量は、58.5なので、
0.96×58.5=56.16(g)
つまり、5.6%以上でやっと沸点が1度上がることになります。
いかがでしたか?
実際に、1℃温度上げるのに56.16gの塩を使って実験するのは大変ですよね(笑)
計算を覚えると、実験する際にもあらかたイメージが付くので便利ですね。
高校や大学の化学でも出てくるので、イメージと「水中の粒の量が邪魔する力」を押さえておくと、
少しは理解が進むと思います。
では、また今度!